特定非営利活動法人
藤沢相談支援ネットワーク

「羊さんからいただく静かな時間」

 スウェーデンの絵本作家エルサ・ベスコフの「ペレのあたらしいふく」という絵本をご存じだろうか。100年以上前に出版されたその絵本は、少年ペレが1匹の羊をお世話し、毛刈りから始まり家族やご近所の人たちの協力で青い服が出来あがるまでの過程が、スウェーデンの自然とともに描かれている。私は30年前にこの本に出会い、今では毎年春になり羊の毛刈りのニュースを聞くと心が弾む。羊牧場から羊毛を購入し、洗って、梳いて、紡いで毛糸にしていく。紡ぐのに、以前はスピンドルというコマを使っていたが、量が多いため追い付かなくなり、今では紡ぎ車を使っている。
 忙しい毎日のなかでも、一人で静まれる時間を持つというのは大切なことだと私は思う。必然的に夜になることが多いが、20分くらいの時間ができそうなら、紡ぎ車をカタカタ回す。仕事で落ち込んだ日もあれば、良い知らせが入った日もある。日々いろいろな事が起こりざわざわした気持ちのまま夜になることもあるけれど、紡ぎ車のペダルを踏んでいると、いつしか心はしんと静まっている。
 手芸店に行けば素敵な毛糸がたくさん店頭に並んでいる。手仕事として羊毛から毛糸にしていく工程は時代遅れかもしれないけれど、効率やスピード重視の時代の中で、氾濫して溺れそうな情報から時には距離を置いて、一人で静かに集中できる時間、そんなひとときをこれからも大切にしていきたい。
 さて、今年の春はどんな品種の羊さんと出会えるかな。