特定非営利活動法人
藤沢相談支援ネットワーク

Gパンでリハビリテーション

 内視鏡で小さなポリープの直腸がんを摘出してから3年たって再発をしました。再発をしたら繰り返す可能性が高いので全摘した方が良いことは最初に聞いていました。

 便に一筋の血液を見つけてから検査を受ける覚悟をするまでに1週間ほど思考が停止していましたが、迷っている場合ではないと意を決して検査を受けました。

 結果は「再発したね!」でした。

 早くオペの日程を決めようと言って、主治医は麻酔医や外科医たちを呼んで、すぐに入院するように段取りを始めました。

 入院は3週間、腸管のストーマ(人工肛門)となって身体障害者4級となりました。術後1か月は傷の痛みに支配されましたが、3カ月位で痛みから徐々に解放されて生活の立て直しが始まりました。

 ストーマは腹直筋を貫いて作るので、周囲が出っ張ってしまうため伸縮性のある腹帯で押さえます。その上にゆとりのあるズボンを履くような指導を受けました。

 この日を境に少年のころからずっと一緒に過ごしたGパンとのお別れでした。

 

 半年近く仕事を休んで術後のリハビリをしていました。リハビリと言っても普通の生活ができるように、家の中や外出先で当たり前のことを積極的にするといった感じでした。

 体力的にも徐々に回復しましたが1年位までは、突然電池が切れたように気力も体力も尽きてしまうことがしばしばありました。

 仕事上、いろいろな障害をお持ちの方々と接してきたこともあって、障害者になったことで落ち込んだりせずに障害受容も出来たのですが、自分らしさの何か大きな部分を失ったような、淋しさというか、虚無感がつきまとっていました。

 ある日、ストーマを腹帯で押さえてから緩めのズボンを穿くと言うことへの矛盾を感じて「伸縮性の少ないデニムならば初めからGパンで押さえれば良いんじゃないの?」と思い当って、早速しまっておいたGパンを試してみました。

 するとどうでしょう! ストーマの収まり具合もいい感じではありませんか!!

 傷も癒えて、ストーマの生活にも慣れてきたのに、何か満たされないでいた日々も

 懐かしいGパンのおかげで、やっと自分らしさを取り戻せたのでした。

 

 「リハビリテーション」とは日本語で「全人的復権」と訳されますが、まさに私はGパンとの再会によってリハビリテーションを成し遂げたと実感できました。
 他の人から見れば、どうでもいいことでも自分が大事にしていることは、どんな些細な事でも失ってしまうと大きなダメージを受けるものです。

 そしてもう一度手にすることが出来た時の喜びは、何ものにも代えがたい大きなものになる事を体感することが出来ました。

 これぞ「リハビリテーション!!」私を取り戻した日になりました。