特定非営利活動法人
藤沢相談支援ネットワーク

富士山

 富士山が好きで、かれこれ7回ほど登っている。幸いにして天候に恵まれ、全部頂上に達しているが、不思議なもので一度も頂上からのご来光を眺められたことがない。

あるときは体力的にバテてしまい間に合わず、あるときはガスだらけで1メートル先も見えないくらいの天気になってしまう。毎回、頂上でご来光を見るように計画を立てているのだが、天気と体力のチャンネルが合わず、縁がないままになっている。

 「富士山に登ったことがある」というと、二つの反応がある。「すごいですね~。」という人と、「なんでそんなところにいくの?」という反応。ある人からは「富士山なんて、馬鹿が登るところですよ。うわっはっは」と面と向かって言われたこともあった。

 確かに富士山は、登山としてはあまり面白くないかもしれない。岩と砂だらけだし、寒いし、空気が薄くて苦しい。膝も痛くなるし高山病にもなるし、ペットボトルを出せば、あっという間にハエがたかってくる。でも、登頂した時の達成感と、登山中に見られる星空のすごさが忘れられず、毎年毎年、登りたいなーと思い続けていて、タイミングが合えば、登ることにしている。

 いくつか登る中で、印象的な出来事。
 頂上から降りてくるときに、9合目あたりで、2,3歩進んでは立ち止まり、2,3歩進んでは立ち止まりを繰り返すおばあちゃんに会った。遭難寸前にも見えて、心配になって声をかけた。「大丈夫?」と聞くと「ええ、なんとか大丈夫です」と言う。「ほんとに大丈夫?」と聞くと、「80歳になるんですが、20年連続で登っているんです。でも、バテてしまって、今年で最後かしらねえ。まあ、あとちょっとなんで」と、ゆっくりゆっくりと歩を進め始めた。しばらく後ろから見ていたけど、休んでいるけど、止まらない。バテきった若者を着実に追い越して、おばあちゃんは頂上目指して歩いていった。弱っていると思ったおばあちゃんは、実はスーパーおばあちゃんだった。

 降りながら、80まで登れるか考えてみたけど、無理~という結論。

 なんとかして、頂上からのご来光だけは、眺めたいと思う。