特定非営利活動法人
藤沢相談支援ネットワーク

10年前の夏の出来事

 10年前の7月。珍しく、父方の伯母から連絡がきた。

父が地元に帰郷し生活を始めたが、体調悪く仕事もできず、生活に難儀しているとの知らせであった。母が他界し半年後の出来事。

「重なるもんだなぁ~」と思うも、一人息子としてはほっておけず、週末の休みを使って日帰りでの弾丸訪問。生まれ故郷は数年ぶり。父との再会は30年ぶりであった。

突然の訪問に驚いた様子だが、すぐに笑顔に。真夏なのに、クーラーも冷蔵庫もない生活。

状況は伯母から聞いていたので、当面の生活費と家電購入費用を用意していた。

封筒に入った費用を手渡そうとするも「受け取れない」の一言。母の死も知っていたようで、そこからは顔を伏せ、泣いて私に詫びる。

そんな姿や、そんなことを言って欲しくて来たわけではない。

一緒に暮らした時間は3年弱。「暮らし」でいえば父も母もさほど時間は変わらない。

父の想いも理解できないわけではない。何かできないか?と思って、駆け付けただけに直接受け取ってもらえなかったことは少しショックであった。

空港まで見送りに来てくれた伯母に「何かの折に援助してほしい」と費用を渡し別れた。

 

 そんなことをふと七夕の夜に思い出した。

今になって思うが、父は気持ちや思いを私に直接伝えられることができて良かったのではいか。私も直接聞けて良かったと思っている。

あの日以来、何の連絡もない。毎年、お盆過ぎにいとこから「おばあちゃんのお墓にお花が添えられていたよ」と報告だけが入る。

きっと、1か月後いとこからの報告が入る。